このソロアルバムの失敗により、田中昌之さんは地元・博多に戻り、やがて場末のクラブなどで細々と歌う“落ちぶれた歌手”に成り下がっていたそうです。

そんな田中昌之さんにさらなる悲劇が襲いかかったのは、1989年のことでした。

趣味の草野球でプレイ中、なんとイレギュラーした打球が喉を直撃し、自慢のハイトーンボイスが出なくなってしまったんですよね。神も仏もあったもんじゃありません。

しかし、捨てる神あれば拾う神ありで、ハイトーンボイスからハスキーボイスシンガーへと転向せざるを得なくなった田中昌之さんを、再び受け入れてくれたのは、他ならぬクリスタルキングだったのです。

1995年にクリスタルキングに再加入した田中昌之さん。これによりムッシュ吉﨑さんとの長年の軋轢も解消に向かっていたかのように思われたのですが…

1997年末、田中昌之さんは3人のメンバーを引き連れる形で、再びクリスタルキングを脱退してしまうんですよね。

実は、田中昌之さんはクリスタルキングに加入した直後から、脱退と再加入を繰り返していたんですよね。

それほどまでにクリスタルキングの音楽は、田中昌之さんが本当にやりたかった音楽とは違っていた…と考えることもできるのですが、余程ムッシュ吉﨑さんとの折り合いが悪かったのか、田中昌之さん側にも問題があったのかも知れません。

それでも独立後の田中昌之さんの窮状を知って、再加入を認めたにも関わらず、挙げ句の果てには他のメンバーを引き連れる形で脱退した田中昌之さんに対して、ムッシュ吉﨑さんは少なからず思うところがあったことでしょう。

その後2人の関係は悪化の一途を辿ることに…。

そんな中、田中昌之さんがテレビで「クリスタルキングは解散した…」と発言したり、自身のソロコンサートの告知広告などに「大都会　田中昌之（クリスタルキング）」と表記したことに対し、ムッシュ吉﨑さんは激怒。

2009年3月に、商標権侵害などを訴え、バンド名の使用禁止や損害賠償を求めた訴訟を起こしたのです。

ちなみに、ムッシュ吉﨑さんが裁判に当たって提示した証拠には、提訴の発端となったコンサートの告知広告はもちろん、10年以上前からの田中昌之さんのテレビ出演時のコメントを録画したものから、雑誌の切り抜きに至るまで…

ムッシュ吉﨑さんが執拗なまでの証拠を挙げて提訴に踏み切ったことで、2人の間に刻まれたミゾはそこまで深いのかと、当時大変な話題になりました。

そして、2010年3月26日に下された判決は次の通り。

田中昌之さんの「クリスタルキングは解散した」との発言については、ムッシュ吉﨑さんの訴えを認めたものの、それは既に時効であるとし、その他の訴えについては、ほぼ全面的に棄却された感じですね。

現在も、ムッシュ吉﨑さん、田中昌之さんともにライブを中心に活動を続けているようですが、両者の間に横たわるミゾはもはや修復不可能なほど広がっていると言われています。

いかがでしたでしょうか。

「大都会」や「摩天楼」などの大ヒット曲で知られ、“低音のムッシュと高音の田中”という対象的な2人のツインボーカルで人気を博したクリスタルキング。

今回、そんなクリスタルキングが不仲な理由と、遂には裁判にまで発展した泥沼の内紛について、その具体的な経緯と顛末についてしまとめてみました。

最後におまけとして、今回、クリスタルキングの代表曲「大都会」の動画を探している最中に、偶然見つけたお宝をご紹介しておきたいと思います。

残念ながら音声のみの動画ですが、マサムネさんのハイトーンもスゴいですし、吉井さんのムッシュ完コピもスゴ過ぎて思わずニンマリしちゃいますよ（笑）