曲のタイトルが「楓」なのですが、歌詞の中にはなんと「楓」という言葉は一度も出てこないんですよね。

そもそも「楓（カエデ）」という漢字は、木へんに「風」と書き、秋になると赤く色づくため「晩秋」の季語でもあります。

そして、この楽曲「楓」の中で、唯一「カエデ」の気配がうっすらと感じられるのが、次の部分です。


「風が吹いて飛ばされそうな」

このように曲のタイトルと詞の世界観に絶妙な距離感があり、聴き手がそれぞれにイメージを膨らませ、それぞれの解釈ができる余地を残した懐の深さこそが、草野マサムネさんの詞の世界の特徴だと言われています。

あの谷村新司さんも、草野マサムネさんの詞の世界にについて、次のように絶賛しているんですよね。

そんな草野マサムネさんの声の特徴と言えば、なんとなく常に息をまとったようなミックスボイスなのですが、柔らかく伸びやかで、美しいハイトーンボイスは、凡人のそれとは次元を異にしています。

まさに草野マサムネさんの歌声は唯一無二で、スピッツが長きに渡って愛される最大の要因と言っても過言ではありません。

そんな草野マサムネさんの歌声や歌い方の特徴について整理してみると…。

凡人が高い声を出そうとすると、どうしても体に力を入れて歌ってしまいがちですが、草野マサムネさんはCD音源はもちろん、ファンが熱狂するライブにあっても、声を振り絞ったり、シャウトするような声の出し方は一切しません。

どんな時にも、眉間にシワひとつ寄せない涼しい顔で、肩の力が抜けたリラックス状態で歌っているんですよね。

「フォール」というテクニックは、語尾の音を下げることで、これが実によくわかる楽曲が、スピッツの代表曲「ロビンソン」です。

この「フォール」が入っている部分を「⤵」で示すと次の通り。

このように草野マサムネさんは、要所要所で「フォール」というテクニックを使っているのですが、語尾の音を下げても次の音へ滑らかに繋げているために、決して不自然には聞こえないんですよね。

その「フォール」の使い所の選び方と、絶妙な落とし具合、そして繋ぎ具合が、草野マサムネさんの歌い方の大きな特徴でもあると言われています。

このアンニュイな雰囲気の歌い方が、草野マサムネさんの歌い方の最大の特徴と言えるかも知れません。