映画俳優としてまさに順風満帆なスタートを切った上原謙さんでしたが、当時の日本には徴兵制度があり、翌1936年には兵役に就くことになりました。

しかし、台湾の台中で軍隊生活を送っていた上原謙さんの元には、毎日大量のファンレターが届き、所属部隊はその対処に忙殺されたという逸話が残っています。

ちなみに当の上原謙さんは、原因不明の発熱が続き、所定の任務期間満了を待たずして除隊となったようです。

その後、スクリーンに復帰した上原謙さんは、五所平之助監督の「新道」で共演した、佐分利信さん、佐野周二さんと「松竹三羽烏」を結成すると、それを前面に打ち出した1937年の「婚約三羽烏」などヒットを連発。

そして、当時の人気女優・田中絹代さんと共演した、1938年公開の映画「愛染かつら」が空前の大ヒットを記録するんですよね。

翌年には「新愛染かつら」「愛染かつら完結編」と、次々の続編が制作され、やがて上原謙さんの代表作となるのですが…上原謙さん自身は「最も嫌いな映画」と、後に名言しています。

なんでも、この映画の脚本を最初に読んだ時に、普通では到底考えられないようなご都合主義な展開にバカバカしくなり、役を降りようとすら考えたそうです。

そして、この時に感じた上原謙さんの予感は当たっていたようで、この「愛染かつら」シリーズにより上原謙さんの人気はさらに高まることにはなったものの、これ以降、似たような役ばかりが回ってくるように…

こうして俳優として幅が狭くなることを危惧するようなると同時に、戦後は女優中心で映画の作製方針を決定していた会社側にも不満を抱いていたという上原謙さん。

遂には松竹を退社し、映画俳優では初のフリーランスとして再スタートを切る決断を下しました。

そして、1948年に主演した市川崑監督によるメロドラマ「三百六十五夜」が空前の大ヒットを記録すると、1951年に出演した成瀬巳喜男監督の「めし」で原節子さんと夫婦役を演じて以降、名作への出演が相次ぐことに…。

その後は、1953年の「煙突の見える場所」、1954年の「晩菊」や「山の音」、1956年の「夜の河」など、日本映画史の傑作に次々と出演していきました。

最後に、今回、上原謙さんの若い頃の経歴や逸話について色々と調べる過程で、入手することができた昔の画像のうち、特に印象的なものを厳選してご紹介しておきたいと思います。

上原謙さんが懐かしい人も、そうでない人も、彼の若い頃の水もしたたるような美男子っぷりをご堪能ください。