そして服部良一さんとタッグを組み、いち早くジャズを取り入れた曲と派手な出で立ちで『ラッパと娘』や『ホット・チャイナ』などをリリースした笠置シヅ子さんでしたが、3cmもある長い付け睫毛に派手な化粧と身振りが警察から睨まれることとなり、翌年から丸の内の劇場への出演を禁じられたのです。

そして日中戦争から第二次世界大戦にかけてはさらに活動の場が限られた笠置シヅ子さんは、服部良一さんから与えられた『アイレ可愛や』を持ち歌にし、専用楽団を率いて巡業や慰問で凌いだのです。

そしてその後も服部良一さんが手掛けた楽曲『大阪ブギウギ』や『買い物ブギー』など多くのヒット曲を連発した笠置シヅ子さんは、‟ブギの女王”と呼ばれるようになったのです。

また私生活では1943年、吉本興業の創業者・吉本せいの子である8歳年下の吉本穎右さんと出会った笠置シヅ子さんは、すぐに交際に発展し、空襲下の東京で一緒に暮らし始めたのです。

そうこうしている内にすでに結核を患っていた吉本穎右さんが24歳の若さで死去してしまった笠置シヅ子さんは、それからわずか半月後に忘れ形見である娘を出産したのです。

そんな笠置シヅ子さんは一度は引退を考えたものの、周囲の励ましにより歌手活動を継続すると、シングルマザーとして奮闘する姿が夜の世界で働く女性に共感を与え、歌手業を支えてくれたのです。

しかし年齢と共に体系の変化に悩み始めた笠置シヅ子さんは、‟育児を優先”という建前上の理由をつけ43歳だった1957年に歌手業を引退し、その後は得意の大阪弁を生かした軽妙な演技で多くの作品に出演したのです。