北海道や東北を中心に旅回りをして、お祭りや寺の本堂などで歌を唄うことで日銭を稼ぐ両親の元に誕生した藤圭子さん。

幼い頃からろくに学校へも通えず、両親に同行して歌を唄うという、旅回りの非常に貧しい生活を送っていたそうです。

そんな藤圭子さんに転機が訪れたのは15歳の時でした。北海道岩見沢の雪祭り歌謡大会のステージで歌った際、レコード会社の関係者の目にとまり上京。その後、下積み生活を経て1969年に「新宿の女」で歌手デビューを果たしました。

息を飲むような美人でありながら、そんな不幸な生い立ちを感じさせる、どこか儚げで影のある風貌の藤圭子さん。

さらに、作家の五木寛之さんが「“演歌”でも“援歌”でもない。“怨歌”である」と評した、ドスの効いたハスキーボイスと凄みのある歌唱というギャップが話題を呼び、藤圭子さんは一躍スターの階段を駆け上がっていきました。

特に、1970年4月にリリースした3rdシングル「圭子の夢は夜ひらく」は、77万枚の大ヒットを記録し、1970年末のNHK紅白歌合戦に初出場を果たすなど、藤圭子さんの代表曲となりました。

そんな藤圭子さんは、プライベートではその翌年である1971年に、当時人気絶頂にあった「内山田洋とクール・ファイブ」のボーカル・前川清さんと結婚しています。

当時、19歳歳でまさに人形のように美しかった藤圭子さんに、22歳の前川清さんが一目惚れ。猛アプローチを繰り返した末に1971年6月の婚約発表に至ったようです。

但し、もちろん当時は、お互いに好きという気持ちこそあったものの、実はどうしても結婚したいというわけでもなかったと言います。それでも結婚を決意した理由について、前川清さんは後に次のように語っています。

そんなふたりは、1971年8月2日、前川清さんの故郷である長崎県佐世保市にある小さな協会で結婚式を挙げたのでした。

ただ、この結婚式についても、若い2人の思惑からは外れたものだったようなんですよね。この点について、前川清さんは後に次のように語っています。

晴れて夫婦となれば、人目を気にせずに堂々と会える！そんな短絡的で幼稚な発想により結婚を決意した藤圭子さんと前川清さんでしたが、そんな2人の結婚生活はわずか1年程で破綻することになります。

かつて、その仲睦まじい様子から“おしどり夫婦”と呼ばれた藤圭子さんと前川清さんの電撃離婚会見が開かれたのは、1972年8月12日のことでした。

しかし、この会見に詰めかけた報道陣から離婚の理由について質問されるも、2人はただ「ありません」と答えるだけのつかみどころのないものだったようです。

と言うのも、歌謡曲全盛期だった当時、2人はともに多忙を極めており、結婚生活自体、実態のないものだった…と、後に前川清さんは語っています。